電子辞書を購入するに当たって、次の条件を考えていました。
結局全ての条件を満たす製品が購入時点では無かったため、サイズに目をつぶって型落ちのSR-E8000+日中・中日シルカカードを購入しました。
さてSR-E8000。電子辞書については多くのユーザからさんざん評価されており、欠点を修正した後継機も出ているので、私の感想など蛇足にすぎませんが、個人的には初めてのIC電子辞書で色々珍しかったので、思いついたことを書いてみます。
- 電源投入から入力が可能になるまで約3秒かかり、起動が遅い。頻繁に引くときはフラストレーションが溜まるので、結局オートパワーオフの時間を長くして切らないで使用している。※E-8500以降では改善されている
- 広辞苑と明鏡が同じキーでトグルするのは使いやすい。E-8500では明鏡はメニューにまわって、お気に入りボタンに割り付けられるようになっているが、E-8000の方が使いやすい。
- PC辞書との大きな違いは、例文や成句が折りたたまれており、特定のキー操作で開くこと。これは画面の小さなIC電子辞書に特化したインタフェースで、始めに全体を俯瞰して必要な部分だけ開いて見るというのは、辞書を道具として使いこなす方には優れた方法だし、画面サイズを考慮すれば「これしかない」方法である。だが欠点は、一度に目に触れる情報が少ないこと。紙辞書のように、周辺情報が同時に目にはいることで興味が触発されて、次々に読むということがない。PC辞書は紙辞書と同じで折りたたまないものが多い。ついでにいうと、SEIKOでは例文と成句でキーが分かれているが、一緒にしていいと思う。
- 明鏡が類語辞典として使えるように拡張されており、語釈から類語に飛べるのは素晴らしい。LogoVista版の明鏡にも類語はあるが、メニューになっていて、語釈から飛べないので使いにくい。
- IC電子辞書の世界では当たり前かもしれないが、参照ジャンプの時に見出し一覧からジャンプできるのは優れたインタフェースだ。PC用のEPWINGビューアでこれができるのはない。どんなインデックスになっているのか興味深い。
- ワードインフレクター(原型で引く)もちゃんと作ってある(EBPocketは適当)。それなりのアルゴリズムとパターンマッチ用の内部辞書を持っているはず。
- 中日・日中辞典で、母音を入れた後にハイフンキーを押すと一声→二声→三声→四声と巡回で切り替わるのは直感的で優れた方法。特殊なキーを必要としない点でもいいアイデア。
- 最小のキー入力で目的の検索語に素早く到達する方法がよく練り込まれている。やはりキーボードがあることが、操作性において非常に有利である。EBPocketがIC電子辞書に比べて使いにくいと言われる点は、結局PocketPCのキーボードの有無というデバイスの特性の問題が大きい。
- 反対に、ジャンプキーの存在は、マウスやスタイラスのようなポインティングデバイスがないために必要になった苦肉の策のような気がする。ジャンプキーを押している間カーソルが表示されるモードに入るが、これはエディタでいえば、viのようなモードのあるインタフェースで、emacsのようなモードレスではない。キャノンだけはスタイラスペンがあるが、ペンのある場合のインタフェースの改善の余地は残っていると思う。
- 新漢語林は親字の収録語数が多いのはいい。デジタル化された漢字源は第一、第二水準だけのものが多いので(キャノンだけ第四水準までだったと思う)。区点、S-JIS、JISが表示されるが、個人的にはUnicodeの表示が欲しい。
ところで、昨年の漢情研 (JAET) 大会での電子辞書座談会でセイコーインスツルの電子辞書企画担当者のお話があったそうですが、
http://khdd.net/kanou/kangae/2005/Dec.html(12/19 電子辞書座談会の項参照)
これによると、(1)辞書コンテンツ毎にプログラムが作り込まれている、(2)収録辞書全部のインデックスをまとめて圧縮し、外字もまとめて管理している、ということ。操作性をよくしようとすると必然的にこうなりますが、大変ですね。
ユーザーから見れば、業界で標準化された辞書コンテンツを購入して好きなメーカーの機種に入れられたら理想ですが、実現することはないでしょう(携帯音楽プレーヤーのように、4GBモデルとか8GBモデルなど自分の用途にあった機種に自由に辞書をインストールできるとか)。